2009年11月11日発行:確定給付型年金制度
【キーワード解説】 〜exBuzzwordsキーワード解説より〜
確定給付型年金制度とは、年金や一時金等の給付額の計算式があらかじめ確定されている年金制度である。厚生年金基金、適格退職年金(適年)、確定給付企業年金は確定給付型年金制度に含まれる。
確定された給付の原資として必要な掛金は、予定利率、予定退職率、予定昇給率などの基礎率を基に数理計算によって算出する。さらに算出した掛金を企業が運用することによって必要な原資を確保する。そのため、運用リスクは企業が負うこととなる。ただし基礎率はあくまで予測値であって実績との乖離が避けられないため、一定期間及び一定の状況の変化に応じて再計算を行い、掛金などを見直す必要がある。
確定給付型年金制度は、企業にとっては給付設計の自由度が高く、従業員にとっては受給額が安定するといったメリットがある一方、金利の変動、年金資産の運用状況、人員の変動などの要因が企業の財務状況に大きな影響を与えるリスクを考慮する必要がある。
【昨今の状況】
ご存じの通り、昨今、日本航空(JAL)の経営再建問題が大きな政治的課題として取りざたされています。
JALの経営再建に向けての課題には、様々なものがありますが、現時点で最も注目されている課題となっているのが、今回のテーマである企業年金(確定給付年金)の存在です。
GM経営再建問題でも、同じように手厚い年金や医療費負担の問題が大きな課題となりましたが、JALも同じような問題に直面していると言えます。
JALは官民共同出資の「企業再生支援機構」の管理下に入り、公的資金投入を含めた資本増強などによる再建を目指していますが、財務省としては、年金問題の解決が支援の前提という立場ですし、国民世論としても、同業の全日空(ANA)よりかなり手厚いと言われるJALの年金問題に手を付けないままの公的支援には抵抗が大きいでしょう。
JALの場合、年金の運用利率が4.5%と、現在の金利水準よりかなり高く設定されているため、この年金支給を保証したままでは、毎年、設定された運用利率と実際の運用利率との差を穴埋めしていく必要があることになり、公的な資金を投入しても、年金支払いへと消えていくことになるからです。
しかし、確定給付企業年金は、いわば企業と労働者との間に締結されている契約であり、受給者(JAL OB及び現職職員)の賛成なしの強制的な減額は、憲法で保障されている財産権の侵害にあたるとされ、単純に法的な強制措置を行うことが難しいのも事実です。
確定給付企業年金法では、給付引き下げを行うには、全受給者の「3分の2以上」の同意を必要としており、会社更生などの手続きに入ったとしても、その受給権は厳格に保護されています。
受給権が保護されているOBの3分の2以上の同意を得ることが困難なことは容易に想像されます。
政府は、給付水準の引き下げをめざし、運用利率を1.5%程度まで引き下げるという特別立法による給付減額への道筋を検討していますが、その実現は容易ではないでしょう。
年金の一時支給による脱退制度の用意など、受給者の同意を得られる落としどころを探ることになると思われますが、それでも調整不可能となった場合は、GMと同じく、優先株による穴埋めなどの手段も検討されるかもしれません。
いずれにせよ、政権交代を果たした民主党がこの問題にどのような結論を出すのか、大いに注目されます。