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2009年8月31日発行:連結納税

【キーワード解説】 〜exBuzzwordsキーワード解説より〜

連結納税とは、企業集団を一つの「課税単位」とする納税制度のこと。国内にある親会社とその100%子(孫)会社等を課税所得計算上のひとつの企業集団とし、課税所得を通算して申告納税するもの。

 

企業集団内に、赤字の会社と黒字の会社が混在していれば、課税所得の計算上通算されるため、連結納税を適用しない場合に黒字会社で支払う納税額が減額されることとなり、一般的にはグループ全体の税負担が軽くなる。連結会計は、支配力基準で連結決算対象となる企業集団の範囲が決定されるが、連結納税は持ち株比率が100%である子会社・孫会社(完全支配関係にある会社)しか企業集団の範囲とならないことに注意が必要。

【昨今の状況】

「<子会社からの配当、非課税に 政府、法人税制で検討>政府は企業グループに対する法人税制について見直しに入った。親会社がグループ内の100%子会社から受け取った配当を課税所得に算入しない仕組みを導入。グループ経営が広がるなか、グループ内の資金移動の妨げになる税制を見直し、グループの余剰資金を設備投資などに振り向けやすくすることで企業活動の活性化を促す。同時に、大企業の100%子会社について中小企業向けの軽減税率の対象から外す措置も検討する。2009/8/16 【日本経済新聞】」

 

この記事ではグループ内での配当が非課税になるような制度が検討されているということを伝えていますが、これは、財務省や経済産業省の勉強会が7月30日にとりまとめた報告書に端を発したものです。この報告書「資本に関係する取引等に係る税制についての勉強会 論点とりまとめ」では、本日のキーワードとしている選択制の制度である連結納税とは別に、多数の企業でグループ経営が行われている実態に鑑み、グループ納税に関する制度を整備したうえで、グループ内での配当を非課税にする制度を検討しています。

 

このような制度が検討されている理論的な理由は、配当に対しての課税は二重課税になってしまうということです。ここで、二重課税とは、同一の所得、財産、消費について、文字通り二重に課税されることです。身近な二重課税の例といえば、例えばガソリン税と消費税などが二重課税ではないかと言われています(ただし、実際に二重課税かどうかには議論があります)。

 

そして、法人が行う配当も二重課税になります。なぜなら、配当は利益剰余金を配当するものですが、当然利益がなければ利益剰余金は発生せず、利益があればそれには法人税が課されています。したがって、配当は、課税済みの利益剰余金を分配するものであり、その配当にもさらに課税されるとすれば、法人が稼得した利益に対して、二重に(利益計上時の法人税課税時、配当に対する課税時)課税されてしまうことになるのです。

 

一方で、そもそも、配当が二重課税かどうかにも議論があり、法人と配当を受け取る側とが別個の実態を持つものと考えれば、それは「二重」にはならないという考え方もあります(それぞれの実態に対して別の課税がなされていると考える)。そして、このようなそれぞれの考え方があるなかで、グループを一体の実態を持つものと考えれば、少なくともグループ内では配当を非課税にしたほうがよいのではないか、と検討されているのです。このような二重課税の回避の問題は、ガソリン税のような身近な部分から、配当やそれが大きな関連を持つ組織再編などに大きく影響します。そして、一般的に節税と言われる方策は、この二重課税の回避を行うことを目的としています。税について考えるときには、このような二重課税の問題について考えることが重要といえます。

 

ちなみに、ここからはやや専門的な論点になりますが、上述の報告書では、行き過ぎた節税についても警鐘を鳴らしています。具体的には、自己株式を発行会社に買い取らせることが予定されていた場合は、配当とみなされる部分の非課税と株式の売却損失という二重の恩恵を受けることは租税回避的なものであるとして、規制の対象とすべきとしています。たしかにその考え方も理解できますが、一方で、このような二重の恩恵が生じる税務上のみなし配当の仕組み自体の制度が実務に浸透しきれていないことも問題といえます。つまり、このようなみなし配当の仕組みは、従前の規定が平成13年の組織再編税制の改正によって、より体系的に整理されたものと考えられますが、「会計」の大原則である資本と利益の峻別という考え方が、会社法や企業会計では希薄になっているなかで、税務だけは、組織再編があろうが何があろうが、払込資本と留保利益とを明確に、かつ、半永久的に区別するという意味で、よく整理されていると思われます。したがって、目先の租税回避と思われる行為を問題にするだけでなく、なかなか実務に浸透しきれていない現在のみなし配当を含む組織再編税制の仕組み、加えて税務上の資本と利益の区別の考え方が周知されるような施策をとってもらいと考えるところです。

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