2009年7月 2日発行:退職勧告
【キーワード解説】 〜exBuzzwordsキーワード解説より〜
退職勧奨とは、会社が従業員に対して自主的に退職をするよう勧めたり、自発的な退職を促すこと。一般に、上司が退職勧奨対象となる部下にそうした声がけを行うしぐさから、"肩たたき"と呼ばれる。解雇は、会社が法的な要件を満たした上で、会社が一方的に従業員との雇用契約を打ち切るものであるのに対して、退職勧奨は会社が誘導して従業員が退職することにより会社との雇用契約を打ち切ることから、最終的な雇用契約の打ち切り主体の観点で全く異なっている。
【昨今の状況】
本年3月より株式市況は大幅に回復し、金融危機は最悪の時期を脱したとの意見が大勢を占めております。しかし一方で、企業業績の回復にはまだまだ時間を要し、雇用面・報酬面における企業サイドの対策が将来不安や手許の可処分所得へ悪影響を及ぼし、それがさらに景気回復を遅らせてしまうというジレンマに陥りかねないとの不安が台頭していることもまた事実です。
こうした中で大企業では派遣切りや早期退職優遇制度の実施などを通じて大規模な人員削減に取り組み、政府は雇用調整助成金の拡充などを通じて雇用対策に躍起になってきたことは皆様もご存知のとおりです。最近ではそうした報道も鳴りを潜め、論点は賞与支給金額の多寡に移っているところではありますが、従業員の観点から見た退職勧奨のリスクはむしろ高まっているのではないでしょうか。
従業員サイドから見た場合に退職勧奨に対処する上で最も大切なことは、「自分が辞めると言わなければ(退職届を提示しなければ)、企業が強制的に自分を辞めさせることはできない」と認識することです。辞めたくない場合はもちろんのこと、実は辞めたいと思っている場合にも「自分は辞めない」という断固とした姿勢で退職勧奨に臨み続けることが、勧奨の撤回や退職時条件面での優遇案を引き出すことができる可能性を高めると考えられます。
一方企業サイドから見た場合にも、もし本当に退職勧奨をするのであれば「最後は(整理)解雇する」くらいの意気込みが必要です。退職勧奨はあくまでも自発的退職を従業員に促すもので、最終的な意思決定権限は従業員にある極めて不利な交渉に臨むという考えでなければなりません。退職勧奨がパワハラや不当労働行為と思われないように準備を入念に行うことはもちろん、交渉を優位に進めるための材料を多く用意できるかどうかも極めて重要です。
金融危機がひと段落し、景気の回復速度や強度が見えてくるようになるにつれて、企業が本来有しておくべき人員のサイズも明らかになっていくはずです。
但し、そういった中で人材が不足すると見れる企業は稀でしょうから、企業サイドではもう少しだけ削減したいという要望が高まっていくと考えられます。加えて、先般実施したようななりふり構わない早期退職優遇制度を何度も実施するわけにはいかず、より小規模な退職勧奨が増えていく可能性があると考えられることから、従業員も会社も双方共に退職勧奨について考えておくに越したことのないタイミングかもしれません。