2009年7月22日発行:リース債務
【キーワード解説】 〜exBuzzwordsキーワード解説より〜
リース債務とは、リース取引の実行時に、会計処理として売買処理を選択した場合に計上される負債勘定。
新リース会計基準の適用により、ファイナンスリースについては、売買処理が強制適用されることとなり、これまでオフバランス取引であったリースの会計処理が、リース資産とリース債務を計上するオンバランス取引となった。
(仕訳イメージ)
リース資産取得時(リース契約時):
リース資産 / リース債務
仮払消費税
リース料支払時:
リース債務 / 現預金
決算時(償却費計上):
減価償却費 / リース資産(減価償却累計額)
【昨今の状況】
キーワード解説にもある新リース会計基準は、2008年4月以降に始まる事業年度に対して適用開始されていますので、2009年3月決算より、多くの企業でこのリース債務が計上開始されています。
新リース会計基準の趣旨としては、経済実態としては資金調達であるリース取引について、売買処理を強制することにより、実態に近い貸借対照表を作成することにあります。
また、国際会計基準との会計制度の一致化(コンバージェンス)の流れに沿った制度改革でもあり、長らく議論が続いた結果、いよいよ導入された制度でもあります。
実質的な、適用初年度となる2009年3月決算において、以下のような報道がありました。
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リース取引を経済実態に合わせて財務諸表に反映させる新会計基準が、2009年3月期決算から導入された。資産負債として計上すべきリース取引の範囲が広がり、財務の透明性向上が期待できそう。ただ、新基準導入前に契約したリース取引は従来通り帳簿計上しない処理も認められたため、財務数値を比較しにくいとの声も出ている。
(日本経済新聞
2009年7月14日)
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日本経済新聞の同日の記事では、上記の例として、全日空(ANA)と日本航空(JAL)の決算表示の違いをあげています。
ANAでは、新基準導入前のリース債務を帳簿に計上したが、JALでは非計上としたため、貸借対照表上の有利子負債の意味には、両社で大きな隔たりが発生しています。
JALの対応が例外というわけではなく、むしろ、今回の決算において、過去分の契約までオンバランスにした企業の方が少数派のようで、貸借対照表上の影響は、今後、じわじわと出てくるというのが実態のようです。
リース債務の規模が小さい企業なら、今回のような措置でも問題ありませんが、多くの企業では、リース債務の金額は決して無視できない規模になっています。
リース債務が貸借対照表に計上されるかされないかによって、ROA(総資産利益率)や有利子負債比率など、財務上の重要な指標がかなり変動することが予想され、これらの財務数値を分析するにあたっては、当面の間、オフバランスのリース債務の有無に注意する必要があるということになります。
このような暫定措置は、新基準導入の移行時の処理として、産業界が強く要望したものとのことですが、帳簿に計上すべき数字自体は、多くの場合、リース会社から提供を受けることもできますし、多くの場合、過去の制度でも注記が義務付けられていた数字です。
非上場の企業が経過措置を求める意味はわかりますが、上場企業まで、経過措置が必要になる実務的な要因は小さいのではないかと思われ、おそらく、経過措置を設けた実質的な意義は、急激な貸借対照表の変動を嫌った産業界の要望ではないかと思われます。
いずれにせよ、当面の間、財務面で大きな影響を及ぼしかねないリース債務の扱いが企業ごとに異なる状態が続きますので、財務数値をチェックする際には注意が必要です。